タイミングは大事。大切。

他人に決めてもらっては意味がない。

自分で今だ!この時だ!って思った時が最高の瞬間。

どんなことでも、きっと乗り越えられるよ。

 

 

第十八章 〜 栗色の姫君 金色の騎士 〜

 

 

激しく痛む頭を押さえながらルカは目の前の自分を見つめる少女を見た。

少女の長い栗色の長い髪が風に乗ってサラサラと揺れている。

「あ、あの・・・」

ルカが口を開いた時だった。

「・・来た。」

少女は小さくそう呟くとルカに背を向け腰に差してあった短剣を抜く。

次の瞬間彼女の目の前に黒い色をした物体が現れた。

「な、何!?」

「下がって。」

小さく悲鳴を上げるルカを少女が制す。

その物体の姿が月明かりに照らされて明るみになる・・。

魔物!!

ドラゴンの姿をした魔物だった。

体長はおよそ3m。

黒い体に赤い目・・。

2本足で立って彼女らを見下ろしている。

ルカは思わず手で口元を押さえた。

何故、何故ここに魔物が!

魔物が人里に下りることなどほとんど無いことなのに!

「これはただの魔物じゃない・・・。」

背を向けたまま少女はルカに言う。

ただの魔物じゃない!?では何だというのだ!

「邪気が寄生してる・・・。」

邪気・・・。

聞きなれない単語にルカは何も言うことが出来ない。

何の目的で魔物がここに・・彼女の頭の中はそれだけだった。

「狙いは歯車・・・十字架の痣。」

!!

十字架の痣・・・私!?

 

次の瞬間、魔物はルカと少女に視線を向けると手の爪で襲い掛かってきた。

少女はそれをかわすと、手を前にかざす。

少女の足元に魔方陣が現れた。

・・・超能力者!?

超能力者の存在は聞いたことがある。

自然の力初め、さまざまな力を持った人達のことだ。

実際に見るのは初めてだけど。

「後ろにいて。」

少女はルカにそう忠告すると詠唱を始める。

詠唱が続くに従い足元の魔方陣の光は増していく・・・。

「かのものを切り裂け! ウィンディウェブ!」

少女が詠唱を終えると魔物の周囲に巨大な風の壁が現れる。

風の壁はその中から沢山の風の刃を生み出し魔物を串刺しにする。

「や・・やった?」

ルカは恐る恐る魔物の方に目をやる。

あれだけの刃に串刺しにされたのだ・・・いくら魔物といえど・・・。

!!

嘘だ・・・。

風の壁が消えるとそこにはまだ魔物の姿があった。

ダメージはあるらしく体のあちらこちらに傷があり血が流れている。

 

それを見て少女は軽く舌打ちをした。

「隠れてて。どこか、目の着かない所にでも。」

彼女は振り向きルカにそう告げる。

幸いここは町の出口の近くの宿屋だったため、人気は多くない。

「で、でも!!」

「宿屋の中にいる、貴方の大切な人達に危害が加わってもいいの?」

ルカの言葉を少女の静かな言葉が遮る。

「!!」

そうだ、宿屋の中には団員の仲間たちがいる・・。

魔物の狙いは自分だ。ここにいたら彼らにまで被害が。

「わ、わかりました。」

そう言うとルカは宿屋のある反対側の茂みに隠れた。

魔物から遠く離れた・・でも魔物や少女の姿は見れる場所だ。

しかし・・あの少女だけで大丈夫だろうか・・。

ルカの胸に不安がよぎる。

少女は羽織っていたマントの前を開けた。

マントの裏には数本のナイフが差し込まれていた。

長さも短いものから異様に長いものまでさまざま。

長いものは組み立て式だろうか・・。

あれだけの数が入っていたのに外見からは何も分からなかった。

少女はその中で長めのナイフを取り出すと構える。

魔物は再び爪を繰り出すと少女に襲いかかった。

今度は少女はかわそうとはせず真正面から受け止める。

爪とナイフがぶつかり、ガキッと嫌な音をたてる。

受け止めたまま、少女は軽く地面を蹴る。

するとどこからか、かまいたちの様な風の刃が現れ、魔物を攻撃した。

あの少女は弱い能力なら詠唱なしで発動することが出来るのだ。

魔物の爪による攻撃を少女は受け止めながらすきを見ては風の刃を生み出して攻撃していく。

魔物は何歩か後ろに退くと口から炎を吐いた。

同時に少女は素早く後ろに下がると呪文の詠唱を始める。

「我の盾にならん! バレスト!!」

彼女の前に分厚い風の盾が出来上がる。

相殺・・・。

風の盾は迫り来る炎をかき消した。

魔物がうなり声を上げると辺りを見回す。

ふと、目が合った気がした。

ルカは後ずさりする。

見つかった!?

魔物は少女からルカの方へゆっくりと方向転換する。

そして素早い動きでルカの方へ向かってきた。

気づかれた!!

逃げなければ! でも、体が動かない・・・!

魔物があまりにもこちらに早く向かってくる恐怖で彼女の体は動かなかった。

栗色の髪の少女が魔物の後を追ってくる・・が間に合わない。

魔物の爪が彼女に降りかかった。

やられる!!

ルカは目をきつく閉じる。

殺される!!

しかし振り上げられたはずの魔物の爪はルカに向かって振り下ろされなかった。

「・・?」

恐る恐る目を開ける。

彼女の目の前には少女のあの風の壁が立ちふさがっていた。

「・・・素早い・・・。」

そう言って、その後を少女が追ってくる。

魔物の足は速く、少女は追うのにやっとだったようだ。

息切れがすごい。

少女が足を止め、呼吸を整えていると魔物が勢いよく少女の方を振り向く。

「!!」

少女の反応が一瞬遅れた。

魔物の爪が少女に向かって振り下ろされる。

「危ない!!」

ルカは思わず叫んだ。

少女が微かに目を瞠る。

 

その時だ。

「真実の眼を!」

どこからか声が聞こえた。

ルカは目の前で起こった出来事をスローモーションの映像のように見ていた。

金髪の髪をした少年が上空から降り立ち、持っていた長剣で魔物の爪を受け止めたのだ。

少年の金色の髪が月明かりに照らされ美しく光る。

後ろで一つに束ねていた髪の毛が風に乗って揺れた。

グリーンの瞳は魔物をしっかりと見据えている。

爪を受け止めたまま少年は少女に問いかける。

 

「レオナ・・無事か。」

 

 

 

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